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読書感想文

 ロバート・ゲーツ元米国防長官の回顧録「DUTY」をやっと読み終えました。1日平均20ページずつ読み続けてちょうど30日。もうちょっと早く読み終えたかったけど、ワタシの英語力ではこれが限界。それでも集中力、持続力の乏しいワタシにしては割と頑張ったほうかも。

 600ページありましたが、すべてがリアルな内容なので、最後までドキドキ感を持って読めました。

 ワタシはゲーツさんが取った施策をすべて評価しているわけではありません。特に、F22の生産中止は勿体なかったかなあと。F35の開発があそこまで遅れ、製造コストが暴騰するとはゲーツさんも予想してなかったんじゃないかな。

 それでも、「ゲーツさん、すげーな」と最も感じさせられたのは、個人的なイデオロギーを排し、リアリズムに徹するその姿勢でした。人は誰も個人的な思想や感情、先入観を土台に物事を判断してしまいます。でも、ゲーツさんの場合は、まず事実があって、それを土台に物事を判断する。先入観のある事案であっても、他人の意見を聞いて修正できる柔軟性を持ち合わせている。これはなかなかできることじゃないです。

 特にすごいと思ったのは、アフガニスタンに増派する兵力の規模をめぐる議論。ゲーツさんはアフガンでソ連が「占領軍」と見なされて失敗した教訓から、大幅な増派には慎重でした。ところが、現場の指揮官からは、ゲーツさんの予想より大幅に多い4万人の増派を要請されます。これを聞いたゲーツさんは一瞬、「気が狂ったのか」と驚愕するのですが、指揮官の分析を聞いて考えを改め、4万人増派支持に転じました(最終的には3万人増派で収まりますが)。この柔軟性には本当に驚かされました。

 本人が全て自分で書いたのか、プロのライターさんに書いてもらったのか分かりませんが、文章が本当に上手でした。特に、最前線で戦う兵士たちや戦死・負傷した兵士たちに対して溢れ出る愛情の描写は秀逸で、ワタシも何度も泣いてしまいました。

 中でも、一番感動的なのが最後。ゲーツさんにもアーリントン国立墓地に埋葬される資格があり、既に「セクション60」に埋葬してほしいとお願いしているそうです。セクション60とは、イラク・アフガンで戦死した多くの兵士たちが眠っている区画。回顧録は次の一言で締めくくられています。

 「最大の名誉は私の英雄たちとともに永遠の眠りにつけることだ」

 米近代史の貴重な記録でもありますし、米政治・外交に興味のある人には、本当にオススメの一冊です。


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